境行きのバス [詩]
蝉の抜け殻が今日も路面に貼り付いているのを見た
黒い雲と白い雲との切れ目がはっきり分かる
世界はもうすっかり季節を塗り替えようとしている
あと一歩で雨が降りそうな空だから
不安な面持ちで人は家路を急いでいく
バスの行き先は境
バスの中でつり革にぶらさがりしゃべり続ける人がいる
何語でしゃべっているんだろう
よどみなく一方的に連れに話しかけている
私にはボサノバのように聞こえる
世間話のようなこと
洗濯物がかわかないとか
夫が怒ったとか
姑がうるさいとか
息子が働かないとか
おおかたそんなこと
顔は決して悲しそうではなく
楽しそうに笑いながら歌っているかのように
それが救い
いつかあんな風にしゃべり続ける友がいたなあ
乗り物に乗ると急に饒舌になって
いろいろ家庭のことをしゃべり続けた
楽しそうだった
人の世話も家庭の世話もよくやいて
働き者の丸顔で泣いたことなんかないような人だった
だからかな
急に逝ってしまって
境行きのバスの中で空に旅立った人を思い出すなんて
やはり雨の降る日にふさわしかったのかもしれない
雨の日にはいつも思い出すのだ
春の彼岸に亡くなった彼女を
今日の空は不安定
境行きのバス
まっすぐに境通りをすぎてゆく
この世とあの世の境を見えないいくつもの糸が
結んでいるかのようにバスが走る
タグ:詩
自然と読み入っておりました・・・
by お茶屋 (2008-09-05 23:49)
不安定な天気と
バスの喧噪に亡き人の面影を
偲ぶバスはこの世とあの世の
想いをのせて走ってゆく・・・
冒頭三行とラスト二行好きな
フレーズです
by 旅人 (2008-09-06 09:01)
何か、暗示するようなお写真にも心打たれました。
きよたんさんの言葉はきれいですね☆はかなさが
増して、心に響きます。
by Rin (2008-09-06 10:55)
デザインを変えたんですね。poem作に触れるのは、久しぶり。
by extraway (2008-09-06 11:07)
今日はこちら青空と白雲の天気で、秋の気配が感じられます。
娘たちのお片ずけがありますが、抜けの殻状態で何から
手をつけていいのかの有様です。
私も昨年 ブログを作りましたが写真の縮小をしないで作ってしまい
失敗しました。 まだブログありました。昨年の6月にイタリアに飛び立ち
ましたが、当時の孫との様子がわかります。最初は時間がかかり重たいですが、どうぞお時間ありましたら覗いてください。
by sasayuri (2008-09-06 11:56)
たびたび申し訳ありません
URLの訂正です
by sasayuri (2008-09-06 12:45)
現実の世界と不現実の世界、
はかなくも想いが広がっていく感じです。
by 青の風画 (2008-09-06 12:50)
お茶屋さん
こんばんは
読み入っていただいてありがとうございます
今後ともよろしく
by きよたん (2008-09-06 20:15)
旅人さん
いつもありがとうございます
バスに乗っていていつもおしゃべりを
していた友を思い出しました
旅人さんの詩も楽しみにしております
by きよたん (2008-09-06 20:17)
Rinさん
ありがとうございます
夏の終わりは少しさみしく感じますね
暗くなるのが早いし虫の声も聴こえて
by きよたん (2008-09-06 20:19)
sasayuriさん
ブログ拝見しました
あとで前のものも読ませていただきます
今日はイタリアから娘が持ち帰ったリゾットを
炊いて食べました
イタリアの香りがして美味しかったです
by きよたん (2008-09-06 20:21)
extrawayさん
もう秋なのでデザイン変えてみました
詩はこれから少しづつ載せていきたいなと思います
よろしくお願いいたします
by きよたん (2008-09-06 20:23)
青の風画さん
黄泉の話が好きです
現実と仮想の間を描くことが多いです
妄想家のところがあるんですね
by きよたん (2008-09-06 20:24)