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ほたる [詩]

気がつけばもう11月も終わりだなんて信じられません
写真も散歩もたまっていますが今回は燦の会20周年記念号に寄稿していただいた
菊池敏子さんの詩を紹介いたします。
菊池さんは詩集「紙の刃」で現代女流詩人賞をいただいており、とてもナイーヴな
素敵な詩を書く方です

先日、燦の会にも来ていただきとても丁寧な指導をしていただきました

人に読んでもらうのだから詩は真剣に書かなければならない
中途半端ではいけないという菊池さん かなり詩を推敲されるようです。

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ほたる

てにそっとこめられて
わたしのせいめいせんや ちのうせん
かんじょうせんを
こそばゆくさわりながら
うごめいているちいさなむし
ゆびのすきまからすける
あえかなめいめつ

みずべのすずしいくさむらとはちがう
おんなのなまぬるいたいおんは
うとましいか

やさしげにつつんでいても
いきなりにぎりつぶすかもしれない
にんげんのてのこわさをしっているか

てをひらくと
こゆびのつけねあたりから
つい とやみにともってきえた
いっぴきのほたる

ほんとうはわたしもしらなかった
うちゅうのうんこうをつかさどる
おおいなるかたのてでさえも
ときにあのようにあらぶることを
そんなてのなかでなすすべもなく
いのち くやしかったよ
ことば むなしかったよ


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全部ひらがなで書かれていることから言葉がやわらかく
感じます
読み辛さもありません
効果的な描き方ですね 
簡単に書かれたものとおもいきやかなり推敲したということです。
ほたるのぬくもりとその手をぎゅつと握りしめれば...という人間が
持っている残酷さ がこのたびの自然の起こした悲劇と結びついています
ほたるが命のひかりを現しているようで新鮮な表現です
ことば むなしかったよ ほんとにそうおもいます
いのち くやしかった  ほんとにそうでした


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さて、明日ですが新宿でNPOふくしま関連のイベントを行いますので、行ってみたいな
と思われた方はぜひおいで下さい。

こちらをどうぞ
http://www.support-fukushima.net/news.html#9


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帰省 [詩]

暑さも少し和らいでほっとしています。

父が亡くなってからは夏はお盆をはさんで長く帰省をします
今年のお盆は今までと違いました。
こどもたちの姿があまりみられません
聞けば市内の人口が他県へ移動し、変わりに原発作業員の方や
双葉郡からの一時移住者避難者が入ってきているのです。
賃貸物件も駐車場もビジネスホテルも満杯らしいです。
町はそのためにぎわっているようですがスーパーに小名浜や四倉の魚が
並んでいないので私はかなしいですね。

今年は家族や友人との絆が深まった気がします。
同級生と会う機会がここのところ多くなりました。

いわき支援のみならず福島全体の支援をめざそう
ということでいろいろ動き始めています。
私たちの出身校の先輩 同級生 まだまだ情熱的な
みんなと寄り添って。
いわきにいる友人もとても頑張っています、
支援をしていきたいですね

福島県川内村出身の詩人青山かつ子さんが詩を送ってくれましたので
紹介します。



人っ子ひとりいない村の
さくらの下を
牛や豚やにわとりが
しずかに
西方へ向かっている

おやっ、母が気にかけていたミーも
仔猫を二匹つれて
犬のあとをついていく
村人が
泣く泣く別れていく
みんな大切な家族たちだ

山の端に
真っ赤な月が昇る

田んぼは乾き
合唱のできない蛙が
沼のほとりで
ぽつりぽつり
声をあげる

海のほうから
アメーバ状に拡がる雲
村が
透明な闇に覆われていく


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原発の被害は思ったよりずっと深刻です
被害についても情報が少なすぎます。
生活を捨てて去らなければならなかった人や被爆した子供たち
この先の人生をどう生きればいいのか少しでも救いを
みつけることができればと考えています。
世界全体の問題なんですよね

昨日図書館へ行ってみました
タックンさんのブログに川村三郎氏の本の紹介があり
面白そうだったので東京の町を散歩した随筆を2冊
借りました。
たくさん著書がありますね
中に武田花さんが写真を担当していたのがあり
その写真がほほえましいのです
東京にはまだまだ古い面影を残す町がたくさんありますね
町なかを歩くのが好きなので本を読む楽しみが増えました。
タックンさんが読んでいる本は見つからなかったのですが。。
今度読みたいです
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もうひとつの収穫
評判を聞いていってみたのですが
西国分寺のクルミド珈琲店のとても美味しい珈琲です
胡桃は割って食べられます。

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最近のプチ幸せでした。

田舎では毎日小さな地震があります。
どうか大きな地震がおきませんように

祈らずにはいられません。




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三崎港にて [詩]

紫陽花が美しい初夏ですね

京急に乗って三崎まで行ってきました
港を見るのは久しぶり 複雑な心境になりますね

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三崎はマグロの水揚げで有名です
まぐろのお店が派手ですね
宮古からの船が停泊しています
こちらまで遠征でしょうか

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食堂 みなと  カフェレストランでした 

窓辺の双眼鏡で海を見る事が出来ますね
素敵なところでした

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食堂 みなと       


三崎港
小さな湾の周りを囲むように
まぐろの店がずらりと並ぶ
ほっぺもおしりも美味しいよという掛け声

食堂みなとはバス停の前にある
湾が目の前に見える二階の特等席に
双眼鏡が置いてある

私は故郷の港を想像する
モノクロの荒れ果てた風景を

城ヶ島のおかげで
津波の被害を受けないですんだという
三崎の海がうらやましい

この海もあの海に続いている
地球全体につながっている
今は静かに見える海が
なぜあんなに私たちを苦しめたのだろう

大きな漁船が停泊している
太平洋を横切り
被災地宮古市から来たのだ

食堂の前を
猫が横切る

潮の匂いがする



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川内村出身の詩人 [詩]

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一ヶ月に一度 燦の会という同人誌の合評会に出かけていますが
ゲストとして今回は青山かつ子さんをお迎えしました。
以前から福島県出身とは聞いていましたが双葉郡川内村の出身でした。
今でも実家は川内村にありますが原発の影響により実家に住む身内の
方は東京のほうに引っ越しをしているようです。
村役場ごと村を離れたというのですから、それは辛い思いでしょう。

放射能の問題は深刻です いつ終わりが来るかわからない
農業で生活する人が多いので牛や馬 耕す畑を失うと生きる糧を
なくします。
しかもその故郷は人がいなくなっただけでそこにはいまだ存在し呼吸
をしているのです。
ずっと暮らしてきてこれからもそこで生きるつもりだった人たちに
はとても過酷なことでしょう。

青山さんの詩には田んぼや畦道 蛇やお堂など村に育った影響を
感じられる詩が多く 地域訛りもその詩に効果的に使われています。
都会の人には書けない詩が多いのです。
中学まで川内村で育ったそうですが生まれた土地がその人を作る
そんな感じがします。

ここに2編紹介します。

五月       青山かつ子 詩集 「野菜をめぐる日」より

風呂場から鼻歌が聞こえる
いつ戻ったのか
父は籾をつめた麻袋のかたちで
湯船につかっている

あの世にいっても
今頃になるとじっとしていられないのは
いかにも貧乏性の父らしい
肩に湯をかけながら
いちども背中を流したことがなかった と思う

−そろそろだな−−
みると籾の先端が割れて
うっすらと父の体が萌えている

ホタルブクロが咲き
かっこうが鳴いている

父のいのちが
いちめんのみどりにそよいでいる

秋になったら
まっさきに「ひとめぼれ」を供え
わたしはつややかに光る
父をたべる

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また、何年も前に書いた詩ですが、全く現在村に起っていることを予言しているような
はっとする自分の詩を持ってきてくれました。当時は過疎の町を書いたようです。

風を読む          青山 かつ子

大勢の男たちが
コールタールの上に砂利をまき
ローラーで固めていく
田畑や川は ならされ
すでに山の頂きにかかっている

ひと月もすれば
村は
呼吸をとめた大地になる
紫煙を上げる熱い砂
おもいにおいが皮膚をふさぐ

やがて 地図からも
村は 消えた

運河にかかる橋に立つ
北に向かって なめた指をたて
風の行方をたしかめる
指先が熟れる
失われた村から吹きあがる 風
まだ たぎっている

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緑の穂が息づく田舎の田畑に青空 美しい村
しかし、農民たちがいない というその哀しい風景が目に浮かぶ時
胸が痛みます

こんな詩が書きたいなと思う青山さんとの出会いでした。



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さくら道 [詩]

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                       横浜 桜木町 野毛にて

今年の桜が咲いた

カモメがゆうゆうと飛んでいる
海のほうからやってきて海のほうに帰って行く

カヌーが桜の下をすべっている
おだやかな朝の光が川面にさしている

川沿いの道を歩く人
そんな風景がいとおしい

今年の春を目にとどめておきたい
心にとどめておきたい いつまでも

力をこめなくてもいい
弛緩したままでいい
ゆだねていたい
花びらが水の上にこぼれおちる
ストップモーションのように

このおだやかな日がいつまでも続きますように
この春の日に
小さな幸せ かみしめていたい

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あいかわらず 余震が続きます

今日 生協に注文した納豆が届きました
スーパーに行っても全然手に入らなかったんです




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冬の或る日 [詩]

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今日 貴方に手紙を書きます

窓の外は木枯らし


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長い間 旅をしてきたわ

ここを離れたくないから

起こさないでそっとしておいて


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時は流れているのに

あの日のまま止まっている古時計

どうして誰もねじを巻かないのかしら?

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最近雨が降らないねって君が言う

空の音符があまだれにならないから

きっといつか雪が降ってくるんだよ




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一年の物語 [詩]


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僕のポケットから君にプレゼントしよう
1年のものがたりを 

なかなか笑わない君 
だから僕はひょうきんものになったんだ
そのうち君は少し笑うようになったね

まるく回りだした世界のなかで
あたたかい日差しに包まれて
たくさんの写真を撮った

遊園地 青い空 白いノート 君の笑顔

12月 心の中のカレンダーに

それらはくるくると木の葉のように
舞っている


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ある個展で写真と言葉の展示に出会いました
印象的だったのでここに紹介いたしました

皆さんの一年はどんな一年でしたか
どんでん返しはありそうですか?



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あの海 [詩]

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あの海                 9月の課題 ふるさとより      


自転車であの海まで行った
長い坂道を登った
灯台の上はものすごい風が吹いて
帽子がとばされそうになった

海原は途中で青から緑色に変わっていて
森が海の中に広がっているように
そのあたりはとても深い気がした

父は私や妹を連れて海に入って行った
いそぎんちゃくやあめふらしを教えてくれた
大きな波がいくつもきて恐かった

浜で城を造った
波が来ても崩れないよう城を守る
足の裏が動く砂でくすぐったい

大きな手ですくわれるように
波が引く、体が海の方に持っていかれる
その感覚がいつまでも残っていた

お盆をすぎるととたんに冷たくなる海
水母が打ち上げられ
あちこちに花のように咲いていた

鎌倉にも海があるし高知にも沖縄にもある
だけど私にはあの海しかない

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前回の記事 国分寺へようこそにコメントを寄せていただき
ありがとうございます  コメントにお返事書いてあります
どうぞご覧ください





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おばあちゃんの窓 [詩]

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おばあちゃんがひとりでお茶をすすっている

タタン タカタン タタン
列車の音が聴こえる

過疎地の村 すみっこの空き地
時空を超えて走る夜汽車が
おばあちゃんを待っていた

ポストに手紙は来ていなかったし
訪れる人もいない日

始めて村を離れる
おばあちゃんはわくわくしていた

虹色の空
延びるレール

おばあちゃんは列車に乗り込んで
空へと登ってゆく車窓から
誰もいなくなった村を見下ろした 

家々の窓がじっと闇の中に開いている
それらは人恋しそうに開いている

誰かが手を振っている
あれは誰だ

いまさらなんで帰ってきたのさ
私ひとりを置いて行ったくせに

タタン タカタン タタン
窓に打ちつける風が強くなった



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この花があるために [詩]

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この花があるために

雨の日 少しは嬉しくなれる

心の中にたくさん

色とりどりの蕾ができるから

この花 紫陽花


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リストランテの入り口に

小さな家の軒先に咲き

路地に咲き

傘の向こうに咲く

手鞠のようにまるくって

こんぺいとうのように甘くって

この花があるために

雨の日 少しは嬉しくなれる

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